Piaget教授の構成主義とPapert教授の構築主義

先日紹介したMIT Media LabのMOOCクラス、Learning Creative Learning

本業のHGSEでの授業でバタバタしているので少し出遅れていますが、なんとかWeek 1とWeek 2のビデオを見終わったところです。Week 2のJoi ItoさんとMimi Itoさんがゲストとして来てくださった1時間のセッションは目から鱗の連続だったので自分の振り返り&日本語で内容を知りたい人向けに後で別途まとめようと思っています。

その事前取り組み課題の一つが以下のものでした。

課題「...read Seymour Papert’s essay on the “Gears of My Childhood” and write about an object from your childhood that interested and influenced you. Share your story in the group. 」

Seymour Papert教授はConstructionism(構築主義)の「神様」で今回のクラスの教授でありScratchを生み出したResnick教授はこのPapert教授を師として仰いでいます。そしてそのPapert教授はConstructivism(構成主義)で有名なPiaget(ピアジェ)に強く影響を受けた方でもあります。(参考:MIT Media Labに紹介されている論文「Piaget's Constructivism, Papert's Constructionism: What's the difference?」)

Piagetはもともと心理学者ですが構成主義という考えを広めた人として教育の世界ではmust knowな人物の一人となっていますその考えは「人は、すでに有する知識構造を通して外界と相互作用しながら、新しい知識を得て、新しい知識構造を構成する」というもの。

構築主義も構成主義も共に
・子供達は自分の知識や自分の捉える外の世界に対する見方を自ら構築していき
・そしてその構築されていった見方は常に経験を通じて再構築されていく、
という見方をしていて、互いに影響し合っている考え方となっている

知識は単に伝達、保存、取り出しするコモデティではなく、構築されるpersonal experienceである、という。世界も同様に人が発見しなくてはいけない「決まった世界」があるわけではなく学習者のpersonal experienceを通じて常に形作られ、変化していくものである、と。

では何が両者の違いなのか・・・上記の論文によるとPapert教授のConstructionismの特徴として以下の点があげられています(上記の論文のAbstractを自分で勝手に意訳+整理)
・人の学び方、特に学習者が「何か」を創りながら学ぶプロセスに注目している
・学習者が周囲にある「artifacts」(創られた「何か」)とどう「対話」し、主体性のある学びを深め、新しい知識の創造を促進されていくか、そこに注目している
・したがって「何か」を創造する課程において人間の発達に影響を及ぼすような環境づくり(道具・ツールや媒体の提供を含め)の重要性を説く

(参考:2007年6月にBEATで開催されていた「知育玩具ー創造的制作活動をアフォードする人工物」というところにどういう道具・ツールがこの考え方から生まれているかのより具体的な事例が紹介されています)


かなーり乱暴にまとめてしまうと(正しい内容は↑の論文をご参考にしてください)二人の違いはPiagetがより人間の内面にとどまる要素の話をしていた一方でPapertはその同じ人間の外部環境との関わり方、外からも見える要素も重視していることがある模様。

変化する外部の状況下で人がどのように知識を構築し、それを変容させていくかといったダイナミックな側面をより深く見ていました。

彼は構築されていくそのような課程にある「知識」は
・fragile(脆く)
・contextual(状況に左右される傾向があり)
・flexible(柔軟な)
である、とも言っています。

まだまだ難しく、しっかりと理解している状態からはほど遠いのですがScratchでインターンをしていたり(Constructionismの熱きサポーターのKaren Brennan教授(Resnick教授のもとで研究をしていた方)とリフレクションの重要性について盛り上がっています)、IOCAを通じてEgaku Workshopに深く関わっていたりする自分は無意識のうちにConstructionismの信仰者になっていたのかも?とか思ったりしています。


最後に、そもそもこのブログの冒頭に載せたPapert教授の記事で印象に残り、書きたかったのは以下の点でした。(子供の頃には誰にもお気に入りのおもちゃなり活動があったはず。その活動やおもちゃ遊びを通じて子供は皆好奇心が刺激され、新たな知識に対して貪欲になり、人生のその後に学んだ他の様々なことの意味を見出し理解を深めるということを体感していく・・・。そのようなおもちゃや活動はとても重要な意味を持つ。Papert教授にとってそのきっかけとなったものは「(車の構造の一部にあった)gear(歯車)」であったという。)

「I fell in love with the gears.This is something that cannot be reduced to purely 'cognitive' terms. Something very personal happened, and one cannot assume that it would be repeated for other children in exactly the same form.」(Papert教授)

私にとっての「gear」はなんだっただろうか?そんなことを思い出していたらおじいちゃんが手作りでつくってくれたニキーチンの積み木(こう呼ばれるというのは数時間前に発見した)を思い出す。次のブログにはそれについて書いてみようと思います。